腹腔鏡下肝切除術における気腹圧の維持は、良好な術野とワーキングスペースの確保のみならず出血制御においても重要となります。
AirSeal®(エアシールモード)はCO2流量を持続的に監視・調整することで、腹腔内の吸引にもかかわらず安定した気腹を維持するために有用な機器ですが、腹腔鏡下肝切除術でのAirSeal®使用時にガス塞栓を発症した臨床例が、論文および学会・研究会発表等で報告されています 1。
呼吸循環管理(気道内圧、中心静脈圧)と気腹圧のバランスにもよると思われますが、腹腔内を吸引したときの急激なCO2流量の増加がその一因と考えらます。また、吸引中に発生する気腹圧の急激な低下に伴い手術室内の空気を取り込むことで圧を維持するとの実験、臨床例での報告もあり、空気塞栓の発症も危惧されます 2 3。
以上のことより、腹腔鏡およびロボット支援下肝切除術におけるAirSeal®(エアシールモード)を用いた気腹につきましては留意点を認識して頂き、適切な運用を行うよう特定非営利活動法人肝臓内視鏡外科研究会より注意喚起いたします。
- Kajiwara M, Nakashima R, Yoshimura F, Hasegawa S. Impact of AirSeal® insufflation system on respiratory and circulatory dynamics during laparoscopic abdominal surgery. Updates Surg. 2022; 74: 2003-2009.
- Huntington CR, Prince J, Hazelbaker K, Lopes B, Webb T, LeMaster CB, Huntington TR. Safety first: significant risk of air embolism in laparoscopic gasketless insufflation systems. Surg Endosc. 2019; 33: 3964-3969.
- Weenink RP, Kloosterman M, Hompes R, Zondervan PJ, Beerlage HP, Tanis PJ, van Hulst RA. The AirSeal® insufflation device can entrain room air during routine operation. Tech Coloproctol. 2020 Oct;24(10):1077-1082.